普段のエサとしては、3頭ともそれほど変わりはないです。干し草、乾草(イネ科の植物をアメリカで乾燥させたものを輸入)をメインに使用していて、その他でペレットというドッグフードのゾウバージョンのような総合栄養食、ビタミンやカルシウム剤を添加して与えています。
うちの動物園のゾウは特にトレーニングや脚のケアに時間を取ってしっかり取り組んでいて、その際にニンジンやイモなどの好きなものをメインに与えています。
その他には、近くに土地を持っている方の所に生えている竹を切らせて頂いて、1日1・2回おやつ程度にあげています。あと、豊橋の明海という港のほうに市の土地があって、そこにある雑木林から枝を切ってあげたり、夏場だと梅田川の河川敷で生えてくる青草を刈ってあげたりということをしています。
好き嫌いについては、トレーニングであげているエサでいうと、ダーナはニンジンが1番好きでチャメリーとアーシャーはイモが好きです。ダーナにイモをあげてもあまり反応は良くなくて、ニンジンが1番食いつきが良いです(笑)。
見ていて面白いのだと、葉っぱ付きの枝をあげた時に、アーシャーとダーナは葉っぱが好きでよく食べるんですけど、チャメリーは葉っぱが好きではないようで、葉っぱをギュッとしごいてバラバラと落としてしまって裸の枝を好んで食べていますね。
掃除をしっかりしています。
うちのゾウ舎が国内では比較的珍しくかなり大きな敷地を取っていて、(放飼場に)砂を入れているんですけど、ゾウがずっと歩いていると地面が転圧されてしまうんです。砂でもふかふかの地面のほうがゾウの脚にもすごく良いのですが、それがもう固くなってきてしまっているので、このお正月にできれば少し耕しなおして、ふかふかにさせたいというのは考えています。
あと、夏場は(ゾウ達は)毎日プールに入ってクールダウンしていますが、週一で必ず月曜日の休園日に水を全部抜き、中を全部掃除して、また水を溜めて、というのをやっていました。砂が流れてプールに入ってしまうのでその砂は全部上げて、ということを熱中症になりかけながらやっていました(笑)。
綺麗なプールを保っていたら、今年は多いと1日3回とかプールに入っていましたね。
今年、チャメリーが29歳でアーシャーが44歳です。日中、チャメリーとアーシャーが一緒に過ごしていて、ヘリが上空を通ったり重機が急に前の道路を通ったりした時に、チャメリーがちょっとパニックになって「パァーー」って大きな声でアーシャーを呼ぶんです。ゾウの鳴き声って言われるとパオーンって頭で思い浮かべると思うんですけど、実際はそんなに聞いたことが無いですよね。結構この2頭で呼び合ったりして声が聞こえるので、もしチャンスがあれば聞けるかなと思います。
そんな風にチャメリーは普段お姉ちゃんに頼りにいくことが多いんですが、チャメリーは若い分食欲が旺盛で、アーシャーのエサを取ったりします。アーシャーがおすそ分け程度に(チャメリーに取られた)エサを取ろうとすると、(チャメリーがアーシャーの)鼻を前肢で蹴ったりとかするんですけど、それでもアーシャーは怒らなくて、姉御肌というか面倒見が良くて、言い方が悪いかもしれないですけどチャメリーがうまくアーシャーを使っているような感じです(笑)。2頭はとても仲が良いので、それはよかったなという点ではあります。
ダーナは男っぽい人があまり好きではないです。体格の良い男の人がダーナに「ようっ!」ってやったりすると、怒って鼻を振ったりだとかしますね。逆に、女の人にはそんなに強くやったりはしない感じはあるので、トレーニングをする際はそのあたりを気を付けています。
アーシャーの場合は、とりあえず最初の1か月くらいは様子を見て、1か月くらい経ってこっち(飼育員さん)が気を抜いたときに柵越しにアタックとか鼻をシュッと出してみたりして、その人が思い切りビビったりするとアーシャーがそこで「ああ、私より下だわ」と見切っている印象がありますね(笑)。
逆にダーナはファーストインプレッションが強くて、最初の導入部分でダーナに気に入られないと慣れるのに何年もかかったりだとか、その人にばっかり鼻で攻撃をしてくるだとかがあるので、そこらへんがちょっと違って面白いかなと思います。
元々ダーナとアーシャーでペアリングはしていましたが、今後はおそらく無いかなと…。
いつもダーナが出ているところが第3放飼場、真ん中に区切りがある小さなプールがついている放飼場を第2放飼場と呼んでいるのですが、第2放飼場でチャメリーとダーナがペアリングしていて、向こうの柵越しで交尾が始まったりすると、やきもちというか…アーシャーがその柵越しに寄って来てお尻を向けて、というのはありますね。
たぶん、アーシャーとしては、ダーナにかまって欲しいけどっていうのがあるのかもしれない。言葉が難しいですね(笑)。
アーシャーは確かにダーナのことがすごく好きで、柵越しで排尿したりだとかします。動物だと尿がアピールになるんです。やきもちは焼いているのかもしれないです。ただ、そばにチャメリーがいてくれれば、アーシャーはダーナのことは見向きもしないですね。
多いと2回~3回、夏場は水をかけています。
ついこの間までダーナがホルモンの関係でマスト期という興奮期にあって、その間は外の気温が5度であろうと水を浴びて、体から湯気が出るくらいカッカしているみたいです。なので、夏場とかマスト期とかはだいたい多いと2、3回ぐらいで、1回で本当に長いと40分くらいずっと水を浴びていて、ここでクールダウンはできています。
アーシャー、チャメリーはだいたい多いと3回ぐらいプールに入るので、同じくらいのクールダウンはできているのかなと思います。ダーナについては、(望む)タイミングで水をかけれているのかがちょっと気になります。トレーニングの時間が決まっているので。
工事が完了してダーナの放飼場ができればダーナもプールに降りられるようになるので、もしかすると来年の夏はダーナがプールに入っている姿を見られるかもしれないですね。
最初は食事に降りて来たタイミングでカランカラン鳴らしていました。2頭が見て、人が枝などを持っていれば「何かもらえる!」とサーっと寄ってくるので、そのタイミングでカランカランと。それを10回もやらないうちに覚えてしまいました。なので、2頭ほぼ同時に覚えたといえますね。1頭が「エサっぽい。」と思って行けばもう1頭もついていくっていう感じでした。
足はチャメリーのほうが速いので、いつもアーシャーが追い抜かれて、来るような感じですね(笑)。
トレーニングでもそうなんですけど、こちらが先に何かをしてあげてそれに対してご褒美をあげるということをします。足を上げさせるっていうのも、人間だったら「右足上げて」って言ったら上げますが、言葉が通じない中でどうするのっていうと…。最初に竹の棒で足にタッチしてあげて、その瞬間に笛を吹き、そしてエサをあげる。これを繰り返していって、何回かやった後に竹の棒を離しておいてやるとエサが欲しくて足を上げるので、その瞬間に笛を吹いてエサあげて…ということを繰り返していくうちにどんどん高く上げていくようになるので、そのようなやり方をしています。
1日2回あげている竹と枝のエサやりと、1日2回ずつのトレーニング(足洗いとか)をしている時間が一応コミュニケーションの時間かなと思います。
あとは、前を通るときは声をかけたりしています。わざわざゾウたちに近づいて撫でたりはしないです。のんほいパークのゾウは準間接飼育です。ライオンやトラは基本的に中に入らないから間接飼育、ウサギやペンギンは同じエリアに入るので直接飼育になります。準間接飼育というのは、全く触らないというわけではないですが、同じエリアには入らないという飼育方法です。
なので、トレーニングの時間が一番コミュニケーションの取れる時間かなと思います。
今日のように(工事の関係で)ダーナを外に出せないと、狭い部屋の中で糞をしてそれを踏んづけて脚が汚れてしまったり、そういう影響はあります。ただ、極端にエサ食いが落ちてしまったり、便の状態がすごく悪くなったというようなことは今のところありません。全くストレスを感じていないということは無いと思いますが、明らかに体に不調をきたすということは無い感じです。
ゾウ舎の工事がいつ頃に終わるのかという話は・・・管理職の方を呼んでもらって…(笑)。
とりあえず、ダーナのところは今年度中に完成です。リニューアルは平成32年度という話でした。
今のところ話は出ていないです。要望があれは、イベントとして検討したりするかもしれないですけど、それが絶対石拾いかっていうと…。あと、内覧会もどれくらいの規模でやるかは今の状況(コロナ)で考えると…うーんっていう感じですね(笑)。
チャメリーを横浜から預かっている状態ですが、月に1回(コロナの時期は半年くらい来れていなかった)所有しているズーラシアのゾウ班の方と、チャメリーがその前にいた金沢動物園の方が来て、足の状態などを見てもらっています。
ガイドでも言っていない話はこれぐらいですかね(笑)。
今月も、ズーラシアの方2名と金沢動物園の方2名が来ます。その時に、経過報告をしたりして1時間ほどミーティングします。所有としては横浜の動物園のゾウなので、うち(のんほいパーク)がチャメリーに試してみたいなと急に始めて、向こう(横浜の動物園)が把握していないと良くないので、そういったことの擦り合わせを月イチで行っています。
そうです!
横浜の方の前で言いづらいんですけど(コロナの関係で)半年くらい空いてしまったんですよね。横浜では直接ゾウ舎の中に入って飼育していたので、こちら(のんほいパーク)に来た時には、もちろん上の許可も取って向こうの飼育員さんが中に入ったんですけど、その時にチャメリーが驚いたような感じがありました。忘れてしまったわけではないんですけど、なんか雰囲気が違うなっていうのが見受けられましたね。
アーシャーをずっと担当していた上野の方、もう定年された方なんですけど、マーラが生まれた時に豊橋に来たんですよ。今はだいぶ柔らかくなったアーシャーですが、まだちょっと(さっき言ったように)見切った人に対して強めに出ていた頃で。ただ、その30年以上アーシャーを見てきた方が来たとき、最初アーシャが「ん?」ってなっていたんですけど、10秒くらいしたら「はっ!!」っとした顔をして、気づいた様子がわかりました。自分は見たことないトロンとした目をしていましたね(笑)。
(ここからはSNS経由で寄せられた質問です)
なにをもって順調と言うのかは難しいですね。順調だともう横浜に帰ってしまっていると思います(笑)。
ただチャメリーが金沢にいたときは、向こうの雄ゾウは受け入れなくて、乗せもしなかった(交尾態勢にもさせなかった)んですけど、ダーナはしっかりと乗ってて、その点では順調なのかなぁって思います。
ペアリングをすると何かあった時に対応しないといけないので、24時間監視です。(ペアリングしている)第2放飼場の前に車を停めて夜中も見ています。いつもは長くても3日か4日で部屋に帰るんですけど、この間はめちゃくちゃ長くなって8日間か9日間(第2放飼場に)出っぱなしでした。交尾回数も過去最高だったのかな?
ペアリングが終わった後に何かチャメリーが違う行動をすると、飼育員同士で「妊娠?」って話になってます(笑)。仲はすごく良くてペアリング自体は順調で、あと種がつけば…って感じです。つい数日前から(輸送箱の)箱入れのトレーニングもしています。
生まれる前に返しますね、はい。妊娠期間が22か月ととても長いです。
さきほどの説明の通りですが、決まっている(発表している)のが、そこ(現在工事中のダーナの放飼場裏)で、そこからは何にも聞いていなくて、今はわからない状態です。
3頭とも横になって寝ます。
好きな寝る場所は、チャメリーだとだいたいここら辺(部屋の隅っこ)です。アーシャーが隣の部屋にいて、アーシャーを感じ取れるからかもしれないですし、冬はここから暖房が出るので暖かいのもあるのかなと思います。
後は、寝返りと一緒でだいたい右と左で交互に、例えば右で40,50分寝たら1回起き上がって、ちょっとしたらまた左になってという感じで交互に寝るのが多いです。基本的にゾウは3,4時間くらいしか寝ません。やっぱり野生動物なので寝る時間が短いです。アーシャーだけ、長いときには7時間寝ます。
部屋にカメラがついていて、毎日ビデオチェックで夜間の行動の観察もしています。アーシャーは7時過ぎとかでもまだ寝ているとか、夏場で外が明るくなってから7時過ぎになってからもう1回寝るとかありますね。アーシャーはすごく寝る(笑)。
断面でいうと、プールがあって、段差があって、一番底があって、その反対が大沢池で壁になっているので、それを超えられることはないと思います。アーシャーが前肢をつけて前のめりになることはありますが、人間と違ってそこから乗り出す力がないので、よっぽど大丈夫です。
いい意味で早く帰ってほしいですね。そこは神のみぞ知るってなるんですけど(笑)
お忙しいなかたくさんの質問にお答えいただき、ありがとうございました!
インタビュー日:2020年12月15日(火)