(はじめに、SNSに送られてきた質問です。)
図に書いてみますね。
ここがロバの放飼場の位置で、中はこうなっています。普段部屋は変わらないですが、誰かが亡くなったりした場合は部屋移動があります。今はこの配置で落ち着いています。
和光がいる部屋に福宝がいて、コロンがいる部屋が元の和光の部屋だったと思います。チーとミーは前はもぐもぐ広場にいました。福宝が亡くなってから部屋移動でチーとミーがこっちの厩舎に来たので、現在もいっぱいです。
福宝が亡くなる前に寝たきりの状態で、毎日チェーンブロックという機械で寝返りをさせていました。和光も今後年齢的にそうなってもおかしくないので、そのチェーンブロックが使える部屋に移動させました。(元々和光が使っていた)空いた部屋にコロンを移しただけです。コロンはどの部屋でも大丈夫なので。
部屋の真ん中に仕切りがあります。
前もぐもぐにいたときは広い部屋で2頭一緒にいましたが、餌を食べる量に違いがあるので、こちらでは部屋を仕切っています。ミーの方が結構食い意地が張っていて、同じ部屋で2頭分の餌をおくとミーの体重が増えすぎてしまうからです。
今は仕切りがあるので、その心配はなくなりました。
放飼する順番が決まっていて、コロンから先に出してロバを3頭先に出します。そうすると、チョビンがコジロウの部屋の前を通る形になって…オス同士のためか結構チョビンはコジロウのこと気にしていて、部屋の前行くとコジロウにグイグイいきます。それで、お互いに甘噛みしあったりします。
オスがコジロウとチョビンだけというのが要因だと思います。帰り際も同じで、コジロウが先に部屋にいるとチョビンは帰るときに絶対コジロウの部屋へグイグイと寄って、ちょっとちょっかい出して帰るみたいな行動をします。
仲がいい訳ではないと思います。
若いころコジロウとチョビンがここでやりあって結構唇から出血とかがありました。昔はすごい注意はしてましたが、今はもう歳のため激しくはやりあうことはありませんね。大怪我じゃなければ、様子見で獣医に見てもらって治療をしてもらいます。チョビンとコジロウはそういう仲です(笑)。
コジロウ単体だと大人しいですよ。向こうから来ると、やっぱりコジロウもやり返しますね。今はある程度落ち着きましたが、オス同士はお互いに気になってしまうようです。
(次は盛り上げ隊!からの質問です。)
基本的な餌はイネ科の牧草のチモシーですね。他にはヘイキューブ(アルファルファというマメ科の栄養の高い草を固めた餌)があります。後は、草食動物用のフードであるペレットを少し。(ペレットは)ビタミンや栄養的な物が含まれてるので、ご褒美やサプリメント的な意味合いであげています。後は、ニンジンもあげています。
最近は、年寄りが多いので体重維持のためにちょっとカロリーの高いビート(甜菜(てんさい)で砂糖を作った後の搾りカス)を、和光とコジロウにあげています。年寄りでちょっと体重落ちている個体には、栄養価の高い餌をあげたりしています。ですので、普通はチモシーがメインで、プラスアルファは年齢とか個体の状況によって別々という感じです。
量は、一番多いのが和光で、1日チモシーを5.5kg、ヘイキューブ2kg、ZC(ペレット)とかは2掴あげています。チモシーの量は身体の大きさによって結構変わるので、1番多くてそのくらいになります。ミニチュアホースだと、1日あげるチモシーは大体1.3kgになります。好物は、個体によって様々ですね。和光は意外とニンジンがあんまり好きではないです(笑)。
土日の餌やりはニンジンをあげるんですが、和光だとすぐ途中で飽きてしまい、コロンもニンジンがあまり好きではないです。くるみはニンジンも大好きでZFっていうペレットも大好きなので、なんでも食べる感じです。ニンジンはウマが好きなイメージがありますが、みんなが好きというわけではありませんね。
そうですね。個体によって食べる順番が違うだけです。和光の場合は最後にニンジンをしょうがなく食べる感じです(笑)。
環境の工夫ですが、年を取ってきたので放飼場よりも夜寝る部屋を重視しています。
元々の床はコンクリートですが、歳寄りの和光とコジロウに関してはマットを敷いてその上に床材を敷くようにしています。床材は、のんほいパークでは麦藁を使っています。
コンクリートで寝て起きる時に、蹄のある動物だと結構滑りやすかったりするので。年を取って体の動き悪くなると、寝た後起きる時に踏ん張りが効かずに滑って転んじゃったりします。それを防止するためにマットを敷いています。
コジロウも3年くらい前からマットを敷いています。その頃で25歳になっていて、加えてコジロウは元々足があんまり良くないので、年を取って起き上がりにくくなった時がありました。滑って擦り傷みたいなのが足とか腰にできたときがあって、その頃からマットを敷き始めました。それからは、(擦り傷は)一切なくなったと思います。
最初、コジロウの部屋にマット敷いたときは、マットを踏むのを怖がっていましたね。初めての物というのはどの動物でもそうなのですが嫌がります。少しずつ慣らしていくのがセオリーなので、最初は1枚敷いて様子を見ていたのですが一向に踏みませんでした。この間にも、起きれずに滑っている状態が見て取れたので、なるべく早く敷きたいなと思って。次の日に強引に3枚敷きました。そしたら一番奥のマットのない狭いスペースに一晩中いて餌を食べている時がありました。
次の日にはその隙間も無くして、無理やりマットの上に乗せたら平気になりました。今部屋にはギチギチだと3枚敷いています。
本当は、ゆっくり慣らしていくのがいいのですが、(滑っていて危険なので)急を要していたので。初めて見るものには敏感な動物が多いですが、そうじゃない子もいます。和光とか福宝はマットは平気でしたね。
こっちで環境を良くしてあげるつもりでも、動物にとっては、最初は恐怖だったりプレッシャーだったりすることがあるので、年を取るのを見越して若い時から慣らしておくのも大事だと思いますね。後、チョビンに関しては体が小さいので、フカフカの床材を多めに敷いています。
ウマのような家畜は、もともと人と過ごしてきた動物です。動物園としては、動物に直接触れて何かを感じるということを大事にしたいと思っています。そのためには、安全な子にしなければいけません。飼い方や扱い方によって、その子の性格は変わります。
家畜で使われる動物はもともと群れを成すものが多いので、(飼育担当としては)そのリーダーになることを意識しています。ウマのリーダーになる、といっても、厳しく言うことを聞かせるわけではありません。群れを統率するリーダーは「その子についていけば、他のウマが安心と安全が保障される」という存在であるべきです。「この人といれば安心だな、安全だな」と思ってもらえるような存在になることが大事だと思っています。
ウマが何かに驚いて暴れてしまったときにも、こちら側が慌てずになだめます。そうして「この人は自分がパニックになったときでもなだめて落ち着かせてくれる存在だな」と思ってもらえるように意識して接するようにしています。何かを教える時も、その人に対して「怖い」や「怒られる」というイメージを植え付けず、普段からの扱い方で信頼関係をつくっておくことがとても大切です。常にウマが神経質にならないように、落ち着いた動作を見せるようにしています。
スキンシップも、そのことを頭に置きながら、メリハリをつけています。触るときは、裏堀(蹄の裏の掃除)やブラッシング、何かを教えるときだけで、それ以外では基本的には触りません。トレーニングも、短時間でやるというのが効率も良いので、普段からはあまりしません。日常の作業の中だけでも、ウマとの関係は十分に作ることができます。
話しかけることも大事です。違う言葉でも同じ声のトーンだと分かりにくいので、注意するときも、褒める時も、声のトーンを変えて分かりやすくしています。クリッカーやホイッスルを使ったトレーニングが難しいので、声で伝えることが多いです。伝えることはなるべく早いほうがよく、物事が起こった0.6秒の間に褒めたり注意したりすることが大事です。普段から声掛けをして、こちらの思っていることは声で伝えます。だから、動物も、言葉としてわかっているかは分からないけど、声のトーンで理解していると思います。
人のことは見ています。飼育員は毎日同じ人というわけではないので、他の人にトレーニングを引き継ぐときがありますが、ウマの目線がずっと僕の方を向いている時とかはあります。
(後半につづきます!!!)
インタビュー日:2021年12月8日(水)