自然史博物館・学芸員さん(貝類担当)インタビュー(2018年6月28日)

のんほいパーク内にある豊橋市自然史博物館です。開館30周年を迎えました。

豊橋市自然史博物館学芸員・西浩孝さん(貝類担当)に、カタツムリに関してインタビューをしてきました!


Q: カタツムリとはどのような生き物ですか?

A: 簡単にいうと、陸にすむ貝の仲間です。よく街中で見かけるような丸っこい形をしたものだけではなくて、細長い形をしていたり、蓋をもっているものなどを全部ひっくるめてカタツムリと言っていいと思います。


Q: エサは何を食べているのですか?

A: 肉食のものもごく一部いるんですけど、基本的には草食です。たとえばガードレールの湿ったところの表面に藻類が生えて、うっすら緑色になることがあると思います。そういったものを「歯舌(しぜつ)」といって口のところにある歯で削り取って食べています。


Q: 寿命はありますか?

A: もちろんありますが、なかなか調べるのが難しいです。飼育をしていて、20年位生きたという例もあります。でも実際はもうちょっと短いんじゃないかなと思います。


Q: 大きいものの大きさはどの位ですか?

A: 日本にすむもので一番大きいのが殻の直径で8cm位です。高知県にいるアワマイマイという種類が日本最大です。


Q: のんほいパーク内で見られる場所はどこですか?

A: 難しいですが、例えば、バードエリアに行くところに川がありますよね。あの付近が割とよく見かけます。木が生えてて、ちょっと薄暗い感じの場所です。

バードエリア手前の川です。カタツムリを見られるかも!?

Q: 梅雨以外の時はどうしているんですか?

A: 冬は落ち葉の下や、木の枝の下で冬眠します。(冬以外で)乾燥し活動していないときは、木の幹だとか木の葉っぱの裏側とかにくっついてお休みしています。


Q: 背中の殻は生まれたときからついていますか?

A: ついていますね。一生、卵から生まれたての時からついていて、殻を徐々に大きくしながら成長していきます。


Q: 会話はしますか?

A: 会話はしていないと思いますが、求愛のためにフェロモンを出して、相手を探すことはあります。


Q: 喧嘩はしますか?

A: 喧嘩もないですね。ただ、一緒の飼育容器で飼っていると、調子が悪くなるとか、成長が悪くなるとかそういうのはあります。


Q: 人と仲良くなることはできますか?

A: 飼っていてもカタツムリが「あ、飼い主だ」と覚えてくれるっていうことはないですね。エサをあげて、一方的に楽しむ感じです(笑)


Q: カタツムリは生涯に何匹のカタツムリに会えますか?

A: それは分からないですね(笑)
会えないで終わる個体もいるだろうし、密度が高いところだと何匹も会えるだろうし、個体によると思います。


Q: カタツムリの触覚は触っても大丈夫ですか?

A: ちょっとぐらい遊ぶにはいいと思います(笑)
カタツムリは目や頭を振りながら、大触覚で障害物を探りながら歩いたりしています。なので、つついても何か障害物にぶつかったなと感じるだけだと思います。


Q: 右巻き同士、左巻き同士でしか交尾ができないのは何故ですか?

A: 右巻きのカタツムリは交尾をする時、向き合って右側同士をくっつけて交尾します。左巻きのカタツムリは、交尾孔などが左側にあります。そうすると、向かい合っても上手いこと合わさりません。カタツムリが横に並べばいいと思うかもしれませんが、カタツムリにとっては向かい合って行うような本能がありますので、横並びではできません。

カタツムリのぬいぐるみです。
ボランティアの方が作成されたもので、2体とも右巻きです。カタツムリ展で展示されました。普段は資料室の中にあって見れないそうです。

Q: カタツムリ総選挙があったらどのカタツムリを推しますか?

A: アオミオカタニシという種類が一番可愛くて好きです。沖縄にいるカタツムリで、色がとても綺麗なんです(補足:殻が黄緑色をしています)。殻の標本を作ると、実は白いんですよ。なぜ黄緑かというと、殻の中身、軟体部が黄緑色をしていて、それが透けて見えています。つぶらな瞳が可愛いんです。


Q: カタツムリを観察する際に気を付けることはありますか?

A: 一般の方にも気を付けて欲しいことは、カタツムリには寄生虫がいることがありますので、触った後は必ず手を洗ってください。カタツムリ触っちゃだめというわけでもないし、怖がりすぎる必要もないです。


Q: カタツムリの解明されていない謎はありますか?

A: 日本でまだ名前のついていない種類がいっぱいいます。新種候補といわれるもので論文を書けば新種になるんですが、そこまでの研究が進んでいません。なので、これからもし研究したい人がいればお待ちしています(笑)


Q: 自然史博物館でおすすめの展示はどれですか?

A: 石巻山が実はカタツムリの宝庫で、展示室でも石巻山のカタツムリを紹介しています。

自然史博物館1階、郷土の自然展示室です。カタツムリの標本はこの部屋で見ることができます。

その中でもオモイガケナマイマイ
普通カタツムリはジメっとしたところにいるというイメージがあると思います。しかし、石巻山の山頂付近のゴツゴツした岩場で思いがけなく見つかったということで、この名前がついています。大きさも1cmくらいしかなくてちっちゃいです。変わった形をしていて、ぺったんこなんです。

オモイガケナマイマイの標本です。愛知県豊橋市の石巻山が模式産地です。

なんでこんな形をしているかっていうと、石灰岩って割れ目がよくあるんですよ。その狭い割れ目に入り込めるように、隠れられるように進化したカタツムリなんです。豊橋を代表するカタツムリです

オモイガケナマイマイ(愛知県:絶滅危惧IA類)は採集禁止です。知らずに採ってしまうと違反になりますので、ご注意ください。


〇 最後に、自然史博物館としてお知らせがあれば教えてください

7月13日から特別企画展「体感!恐竜ワールド」が始まるので、ぜひ見に来てください。

第33回特別企画展 体感!恐竜ワールド 2018年7月13日(金)~9月2日(日)で開催しています。

今回は貝類の専門家である西さんから大変興味深いお話をうかがうことができました。お忙しいところインタビューに応じていただき、ありがとうございました!

今回インタビューを受けてくださった西さんの著書、『カタツムリハンドブック』です!たくさんの種類のカタツムリが掲載されています(そのような本は現在とても少ないのだそうです)。ご興味のある方はぜひご覧になってください!

 

梅雨が明けてしまったのでカタツムリを見つけにくくなっていると思われますが、西さんによると「休眠しているだけなので、木の幹や葉っぱの下などを探せばいると思います。」ということでしたので、のんほいパークにお越しの際に探してみるのもよいかもしれません!


インタビュー日:平成30年6月28日(木)